ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「大丈夫だ。クロエには僕がいるだろう? 僕だけは君の味方なんだから、辛くなったらいつでもおいで」
「ありがとう、スコット……」
二人は手を握り合う。そしてスコットはクロエを自身の肩に引き寄せた。彼女もこつんと頭を彼に預ける。
心地よかった。
スコットと同じ空間にいるだけで、クロエの心は穏やかになる。ゆらゆらと水の中に包まれているようだ。
母がいなくなって、彼女の唯一の心の支えは婚約者だった。身を引き裂かれるような悲しみも、彼の存在のおかげで乗り切ることができた。
スコットが隣にいる。
スコットが私をいつも見てくれている。
そのことがクロエを勇気付けてくれたのだ。
(お母様、天国から見ていてね。私は心から愛する彼と幸せになってみせるわ)