ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
11 私はもう侯爵家の長女ではないようです
クロエの新しい部屋は、もとはコートニーに充てがわれていた部屋だ。
もとより第二子が生まれたときのために用意していた部屋なので、クロエの部屋ほどではないが広くて快適に整われている。日当たりも良いし、中庭に面して静かで落ち着いた場所だった。
しかし、今は目ぼしい調度品はほとんど持って行かれて、まるで主を失ったような寂寥感漂う空間が残ってあるだけだった。
そして床の上には、クリスとコートニーが漁った残り滓のクロエの私物が乱雑に散らばっていた。
クロエは茫然自失と、その汚く食べ残された魚みたいに散らかった様子を眺めていた。
つつと、涙が頬を伝う。
悲しみが溢れ返って、たちまち部屋中に広まった。
あの後、彼女はもう一度部屋の中へ入って自分の持ち物を取り戻そうと奮闘したが、それは徒労に終わったのだった。
継母も異母妹も「これは正統な侯爵令嬢であるコートニーのものだ」と一歩も譲らず……。
途方に暮れるクロエに、父が「これらは全て侯爵家の財産から購入したものだ。当主の私に所有の権限がある」と主張して、彼女には指一本触れさせられなかった。
もとより第二子が生まれたときのために用意していた部屋なので、クロエの部屋ほどではないが広くて快適に整われている。日当たりも良いし、中庭に面して静かで落ち着いた場所だった。
しかし、今は目ぼしい調度品はほとんど持って行かれて、まるで主を失ったような寂寥感漂う空間が残ってあるだけだった。
そして床の上には、クリスとコートニーが漁った残り滓のクロエの私物が乱雑に散らばっていた。
クロエは茫然自失と、その汚く食べ残された魚みたいに散らかった様子を眺めていた。
つつと、涙が頬を伝う。
悲しみが溢れ返って、たちまち部屋中に広まった。
あの後、彼女はもう一度部屋の中へ入って自分の持ち物を取り戻そうと奮闘したが、それは徒労に終わったのだった。
継母も異母妹も「これは正統な侯爵令嬢であるコートニーのものだ」と一歩も譲らず……。
途方に暮れるクロエに、父が「これらは全て侯爵家の財産から購入したものだ。当主の私に所有の権限がある」と主張して、彼女には指一本触れさせられなかった。