ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
第三章 クロエは振り子を二度揺らす

78 もう一度

 ユリウスからは、時間の魔法に関する様々なことを教わった。

 それによって、クロエの操る魔法は更に磨きがかかった。
 彼女は聖女の務めと並行して、貪り食うように時間の魔法の研究と修行を進めていったのだった。

 彼女が特に興味を持ったのは、時間軸の移動だった。

 ユリウスの話によると、時を司るアストラ家の末裔は時間を移動できるらしいのだが、その原理は未だに不明だと言う。過去の文献をあたっても、はっきりとしたことは分かっていなかった。

 確かなのは、過去へ遡った人物は、なにかしらの「強い想い」があったこと。
 それにプラスして、一族の中でも高い魔力と、他になんらかの外部からの力が奇跡的に重なって、時間の逆行が可能になるようだった。

 クロエの母親は、おそらく一度、過去へと遡っている。
 それは彼女の記憶にある母の瞳が証明していた。

 アストラ家の血を引く者は、片方の瞳の色素が若干薄くなる。彼らは生まれたときから左目が薄色のオッドアイで、時間軸を移動した際に位置が入れ替わるそうだ。

 クロエが時を巻き戻したことにより、ユリウスの瞳の色は位置が変わっていた。
 そして母は、物心つく頃には既に逆位置になっていたのだ。

 これは、きっと母は既に一度逆行したに違いない。
 だが、その理由や方法も、まるで見当がつかなかった。
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