ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
母は、父との政略結婚によって、かなり不遇な目に遭っていた。
子を産むだけの道具にされ、生んだ子供に魔力がないと分かると、途端に冷遇された。
夫は外に女を作って、本妻と実子はずっと放置されていたのだ。
それはとても辛い境遇だと、クロエは思った。
こんなの、自分なら耐えられない。
しかし、それでも母はパリステラ家にいて、いつも自分に微笑みかけてくれていた。
仮に逆行したとして、もう一度こんな辛い生活を味わいたいと思うだろうか。自分だったら絶対に嫌だ。
(もし私がお母様で、もし時を遡れるのなら、再びお父様と結婚の道は選ばないでしょうね……)
そうなると、母はパリステラ家の境遇以上に過去に辛い目に遭ってきた経験がある……と考えるのが妥当だろう。
きっと、あの薄遇以上の出来事が、母に起きたのだ。
それで時間軸を戻って、やり直して、
(また父と結婚した……?)
考えれば考えるほど不可解だった。
母の意図が、全く見えない。