ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
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「お父様、具合はいかがですか?」
「おぉ、クロエか。済まないな……」
「いいえ。早く元気になってください。お食事をお持ちしましたわ」
ロバートは、クリスとコートニーの脱走以来、日に日に心が荒んでいっていて、最近は健康を害して床に臥すことが多くなった。
もはや王都にはパリステラ家の居場所なんてどこにもなかった。
魔法大会の不正、闇魔法の使用……そして、脱獄。王家からの家門の信頼は地に堕ちて、今では下級貴族以下だ。
なによりも魔力を重んじる彼にとって、家門から出た魔法に関する醜聞は屈辱だった。
「……まだ、挽回はできます」
クロエは、そんな苦悶する父を励ますように、力を込めて言う。
「挽回なんて……」と、ロバートは自嘲する。
もう全てが後の祭りだった。いずれ来る家門の降格や……最悪、取り潰しの話を待つだけだ。
娘はすっと姿勢を正してから、
「お父様、私たちはまだ侯爵家の身分です。高位貴族なのです。ですので、半月後の建国祭の儀式への出席が叶いますわ。そこで、見せ付けてやるのです。パリステラ家の国家への忠誠と……魔力を!」
凛とした声で言った。