ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜



「お父様、私たちは今もパリステラ家の人間です。きっと今年も神殿の儀式にも呼ばれることでしょう」

「っ……!」

 ロバートは目を見張る。あんなに意気消沈していたのが嘘かのように、にわかに身体の奥から燃えたぎるような闘志が湧いてきた。

 娘の言う通りだ。まだ国王から正式な処分は下されていない。
 自分は、現在も正真正銘のパリステラ家の家長なのだ。妻と次女の醜聞は非常に痛かったが、この儀式でまだ挽回はできるはず。

 王家へ絶対の忠誠を……そして、今後も「魔法のパリステラ家」として国の中枢に立つことを…………。


「はは……」ロバートは脱力しながら額に手を当てた。「そうだったな。お前の言う通りだ……」

「はい」クロエはにこりと笑って「今年も、お父様が誰よりも多くの魔力を捧げるのです。そうすれば、きっと国王陛下もパリステラ家のことを見捨てないはずです」

 ロバートは強く頷いて、

「あぁ……。では早速、準備をしなければな」

「その意気ですわ、お父様」

 その日から、ロバートはまるで若返ったかのように、精力的に魔力の調整を始めた。
 こんなにやる気に満ち満ちているのは何年ぶりだろう。あれは、初の魔物討伐の任務の日だったか。それとも、初の儀式の参加の日だったか。
 まだ若いあの頃の、瑞々しい感覚と高揚感が、彼の胸を満たしていった。

 まだ名誉挽回はできる。それに、聖女であるクロエもいる。二人で家門の汚辱を払拭するのだ。


(お父様、魔力はあなたの全てですものね……)

 そんな父の様子をクロエは冷めた目で見ていたのだった。


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