ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜

82 後夜祭

 帝国の皇子による急ごしらえの結界は、もう張り直しができない状態だった。
 彼の魔力は、パズルをはめるように魔法陣の器を綺麗に満たして、国の四方に均一に張り巡らされたのだった。

 次に張り直せるのは、結界が弱まる一年後の建国祭。
 それまで、外国人である帝国の皇子の庇護のもとで暮らすことになるのは……国として非常に屈辱的だった。

 それもこれも、全部パリステラ侯爵のせいだ。
 彼が儀式で魔力を暴走させて魔法陣を破壊したせいで、とんでもないことになってしまった。

 仮に、あのまま結界自体が消失して、魔物の群れの侵入が容易くなってしまったら、国の秩序は物凄く混乱する。
 それに乗じて、他国から侵略戦争を仕掛けられる可能性も大いにあった。

 それらの最悪の事態を想像すると、友好国である帝国の皇子の結界は、勿怪の幸いと言えるだろう。
 だが、帝国に対して、かつてないほどの大きな借りを作ってしまったことになるが……。

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