ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
このクリスタルは、家系に代々伝わる特別な魔力の宿ったペンデュラムだそうだ。
クロエは「そんな大切なものもらえないわ。それにお守りだったら、お母様が元気になるように自分で持っておくべきよ」と主張したが、半ば強引に母に押し切られてしまった。
彼女は困惑したものの、こんな貴重な宝物を継承させてもらえるなんて、ちょっと背伸びした気分で胸が踊った。
このペンデュラムには、時折り母親が自身の魔力を注いでいた。
小さな石の中には、歴代の持ち主の魔力が宿っているらしい。次の世代に役立てるように、と。
今この瞬間でも、石から母の魔力が感じる気がする。
それは包み込むような優しさを放っているようで、触れるだけでクロエの棘の刺さった心は穏やかになった。
母は、今も私の側にいる。
そう感じるだけで、少しは彼女の傷も癒えたのだった。