ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
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雨は勢いを増して、図書館の窓を打った。ごろごろと遠雷の音が聞こえて、渦巻く雲が暗い影を落とす。
(そろそろかしら……?)
クロエはおもむろに立ち上がる。
そして、図書館の裏にある丘の上の鐘塔へと足を進めた。
時間を逆行する条件を、彼女はずっと考えていた。
魔力と、ペンデュラム。これは絶対に必要不可欠だ。そして、過去へ戻りたいという強い「想い」。自分は、どうしても過去へと戻りたい理由がある。こちらも条件は達成だ。
あと一つの、最後のひと押し……それは、これらを動かす推進力。
稀代の偉大な魔導士は、きっと己の魔力だけで過去へ逆行できたのだと思う。しかし、自分の魔力量はその域へ達していない。
ならば、外部からとてつもなく大きな刺激を与えて発動への起爆剤にするのだ。
それが、あのときの落雷なのだとクロエは感じた。
あの瞬間は、奇跡的にこれらの三つの要素が重なって、過去へと逆行できたのだろう。
……だから、もう一度同じ奇跡を起こせばいい。