ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
そんな中、唯一クロエを庇い立てする人物がいた。クロエの侍女で乳母でもあった、マリアンである。
彼女はどんなにクリスやコートニーからいたぶられても、絶対に折れずに主を守った。
クロエに害する者には果敢に立ち向かい、自身が責められても負けなかった。まさに彼女の最後の砦だったのだ。
クロエは自分のせいで傷付いているマリアンに、酷く心を痛めた。
ある日、「私は大丈夫だから、もっと自分を大切にして欲しい」と涙ながらに懇願したが、マリアンは「お嬢様をお守りするのが私の役目……亡くなった奥様との約束ですから」と、頑として譲らなかった。
彼女は申し訳なさを感じながらも、彼女の気持ちが嬉しかった。
少なくとも、彼女だけは自分の味方だ。たとえ一人だけでも、自分のことを大切に想ってくれているなんて、なんて幸せなことだろう。
二人の間には深い絆があった。
だが……そんな強い防波堤は、ある日、いとも簡単に突然崩れ落ちたのだった。