ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「……」
「……」
二人とも押し黙る。胸が苦しくて、いたたまれない気持ちになった。
「それで、やっと気付いたの。あぁ、自分の能力は本当に『見える』だけで、未来は既に決まっていて、絶対に変えられないんだな、って。だから私は、受け入れることにしたの。己の運命を」
「そんな……」
「だから、家族の行く末も受け入れた。その後は一人で静かに暮らそうと思った。……でも、そんなとき、見えてしまったの。未来の自分の娘の運命が……」
「うそ……」
クロエの顔が青ざめる。さっきからずっと心臓がばくばく鳴って、指先の震えが止まらない。
「っ……」
ユリウスは思わず顔を背けた。
未来が分かっているのに何もできない状況は、きっと想像を絶するほどの深い絶望だっただろう。果たして、自分なら耐えられるだろうか。
「おっ……お母様は……」にわかにクロエが掠れた声を上げた。「だ、だから……いつも言っていたのね。私が心から愛する人と必ず幸せになれから絶対に諦めないでね、って…………」
「えぇ。言ったでしょう? クロエは愛する人と絶対に幸せになれるって」