ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
クロエはぶるぶると肩を震わせた。
息が苦しくなって、脂汗が止まらない。まるで冷たい湖の中に突き落とされた気分だ。
怒りと悲しみが綯い交ぜになって、彼女の全身を襲った。
「わっ……」
落ち着かせるように深呼吸をして、か細い声を絞り出す。
「わ……私があとのことは処理しますので……お継母様はどうぞ……お、お戻りください。手も痛むことでしょう」
「では、罪を犯した侍女を侯爵令嬢が直々に処分するということなのね?」と、クリスは念を押すように継子に問い掛ける。
「………………………………はい」
クロエはこう答えるしかなかった。
「そう。じゃ、あとは任せたわ」と、クリスは高笑いをしながら出て行った。
底冷えする部屋には、クロエとマリアンが呆然として取り残された。