ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「なぁ、スコット。彼女と一度話し合ったほうが良いんじゃないか?」
「オレもそう思う。ちゃんと連絡しているのか?」
蒼白のスコットの顔を、友人二人は心配そうに覗き込んだ。
彼はまるで母親に叱られている子供のように、びくびくと友人たちを盗み見てから、口をぱくぱくさせていた。
「そ……」一拍して掠れた声を絞り出す。「それが……手紙の返事が来ないんだ……。もう、ずっと……」
「…………」
「…………」
友人たちは困惑顔で顔を見合わせた。またぞろ冷たい空気が流れ込む。
とうとうスコットは堪えきれずに、よろよろと近くの椅子にへたり込んだ。
(僕は、どこで……間違ったんだ……?)
頭の中を過るのは果てしない後悔だけだった。
あのとき、不意の異母妹と継母の言葉に動揺して、クロエを突き放すような真似をしたのが悪かったのだろうか。
いや、そもそも、実の母親が鬼籍に入って悲嘆に暮れている彼女を、婚約者としてしっかり支えきれなかったのがいけなかったのかもしれない。
彼女が強引に胸の奥底に押し込めていた寂しさが、自分と仲違いしたことによって爆発して……。
スコットは不穏な考えを振り払うかのように、ぶんぶんと頭を振った。
(このまま悶々と思考を巡らせても仕方がない……)
そうだ、このままでは駄目なのだ。クロエときちんと言葉を交さなければ。
互いに胸の内に溜め込んでもなんの進展もないままだ。いつまでも怯えていてはいけないのだ。
「今からパリステラ家へ行ってくる……!」
スコットは固い決意を抱えて、クロエのもとへ向かったのだった。
◆◆◆
「えぇ~? お異母姉様ですかぁ~?」
だが、スコットを待っていたのは婚約者ではなく、コートニー・パリステラ――彼の義妹になる予定の令嬢だった。