ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
3 これが崩壊のはじまりでした
「クロエ、こちらがお前の新しい母上のクリス。そしてこの子が妹のコートニーだ。さ、ご挨拶をしなさい」
「ご機嫌よう、クロエと申しますわ」
パリステラ侯爵家に新しい家族がやって来た。
かつてはロバート・パリステラ侯爵の愛人だった、元平民のクリスとその娘コートニーである。
クロエは新しい家族の様子に一瞬目を見張ったが、貴族令嬢としてなんとか穏やかな笑顔を保った。
継母であるクリスは昼間なのに胸元の大きく開いた真っ赤なドレスに、少し離れた場所に立つクロエにも襲いかかるほどのきついムスク系の香水。ドレスに負けない真紅の蠱惑的な口紅に、舞台女優みたいな主張の激しいギラギラしたアイメイクがさながら獲物を狙う猛獣のようだった。
異母妹のコートニーは、これでもかというくらいに過剰にフリルが装飾された淡いピンクのドレスと、華美な宝石。そしてじろじろと品定めをするかのような、下から突き上げて来る下品な視線……。
二人の親子の姿はこれまでクロエが出会った貴族夫人や令嬢とはあまりにも掛け離れていて、彼女は戸惑いを隠せなかった。
(どうしましょう……。彼女たちと上手くやっていけるかしら……)
初対面で既にクロエは困り果てていた。
ただでさえ自分と眼前の母娘の関係は綱渡りのような危うさを孕んでいるのに、どことなく敵意を向けられている気がする。
それに、環境の違いゆえに仕方のないこととは言え、二人とは価値観がかけ離れているように感じて、どう接すればよいか分からなかった。
「ご機嫌よう、クロエと申しますわ」
パリステラ侯爵家に新しい家族がやって来た。
かつてはロバート・パリステラ侯爵の愛人だった、元平民のクリスとその娘コートニーである。
クロエは新しい家族の様子に一瞬目を見張ったが、貴族令嬢としてなんとか穏やかな笑顔を保った。
継母であるクリスは昼間なのに胸元の大きく開いた真っ赤なドレスに、少し離れた場所に立つクロエにも襲いかかるほどのきついムスク系の香水。ドレスに負けない真紅の蠱惑的な口紅に、舞台女優みたいな主張の激しいギラギラしたアイメイクがさながら獲物を狙う猛獣のようだった。
異母妹のコートニーは、これでもかというくらいに過剰にフリルが装飾された淡いピンクのドレスと、華美な宝石。そしてじろじろと品定めをするかのような、下から突き上げて来る下品な視線……。
二人の親子の姿はこれまでクロエが出会った貴族夫人や令嬢とはあまりにも掛け離れていて、彼女は戸惑いを隠せなかった。
(どうしましょう……。彼女たちと上手くやっていけるかしら……)
初対面で既にクロエは困り果てていた。
ただでさえ自分と眼前の母娘の関係は綱渡りのような危うさを孕んでいるのに、どことなく敵意を向けられている気がする。
それに、環境の違いゆえに仕方のないこととは言え、二人とは価値観がかけ離れているように感じて、どう接すればよいか分からなかった。