ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜


 コートニーは長い間、貴族の愛人の娘という日陰の世界で生きていた。

 クロエという光の影に立つコートニー。
 ……いや、婚外子の自分は背後に立つことだって、許されない。

(本当ならあたしは侯爵令嬢なのに。自分があのお屋敷に住んで、お姫様みたいなドレスを着るはずなのに)

 ――と、彼女はパリステラ家の前を通りかかる度に、恨めしい顔で屋敷を睨め付けていた。

 いつしか彼女の中にはどす黒い感情が渦巻いていて、それは奈落のように深くなっていった。
 いつか見返してやる、いつか光と影を逆転させてやる。彼女の行き詰まった負の感情は、呪いのように異母姉に向けられていたのだ。



「――ねぇ、お母様。希望の条件にぴったりの殿方がいるじゃない」

 ふと、コートニーが口を開く。

「あら、そんな方いらした? どなたかしら?」

 クリスが目をまたたくとコートニーはにやりと口元を歪ませて、


「スコット・ジェンナー公爵令息様よ」


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