ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「クロエのことを訊いてもいいかな?」
ひとしきり話を終えたところでスコットが尋ねると、コートニーはこくりと深く頷いた。
彼女の微かな緊張感が伝わる。やはり、異母姉から辛い目に合っているのだろうかと、彼は一抹の不安を覚えた。
「まずは……そうだな。そのネックレスは、今はもう完全に君のものになったんだね?」
今日もコートニーは、スコットが去年のクロエの誕生日に贈ったネックレスを胸元に身に着けていた。ピンクダイヤモンドの小さなリボン型の、可愛らしいアクセサリーだ。
彼女はパッと瞳を輝かせて、
「このネックレス、あたしの一番のお気に入りなの! だから毎日着けているんだよ? えへへ」
はにかむような笑顔を見せる。
「そうか」
嬉しそうなコートニーの顔を見て、スコットも思わず相好を崩した。どうやら彼女は、周りを明るく照らすような、華やかな雰囲気を持っているらしい。
ネックレスの本来の贈り先はクロエだったが、義妹がこんなにも気に入ってくれたとなると、彼も悪い気はしなかった。
思い返せば、クロエはこのネックレスを特別な日にしか身に着けてくれなかった。いつも君の側にいるよと、自分だと思って欲しいと……想いを込めて贈ったのに。
(そうだ、次のコートニー嬢の誕生日には、彼女に向けたプレゼントを贈ろう。彼女ならきっと喜んでくれるはずだ)
スコットは、コートニーにはなにが似合うだろうか、なにを贈れば喜ぶだろうか……と、頭の中でぼんやりと考える。今、身に着けているネックレスは、クロエに似合うデザインだったので、次はコートニーのためだけの一点物を用意しようか。