ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
コートニーはスコットの様子をじっと観察する。彼の気持ちの変化を隣に座っている彼女も肌で感じていた。
(もうちょっと、ってところね。お母様の言う通り、男って単純だわ)
彼女はほくそ笑む。次に異母姉の婚約者に会ったときは、勝負を賭けようと考えていた。母親から教わった手練手管で、婚約者の愛情を自分に向けるのだ。
名門ジェンナー公爵家の嫡子の婚約者を、魔力のない無能な姉から天才的な才能を持つ妹へ挿げ替えることは簡単だったが、それだけでは彼女の腹の虫がおさまらなかった。
本来なら自分の居場所だったところに、長々と居座っていた異母姉。
父と母から愛されて育つはずだった居場所を盗られて。加えて屋敷に図々しくも住み込んで、澄ました顔で高位貴族の令嬢面をして。
貴族の証である魔法も使えないくせに。
きっと、本当に平民との不義の子なんだわ。
そんな穢らわしい娘は要らない。
パリステラ家の令嬢は自分だけでいい。
だから、奪ってやる。
あの女から、居場所を。婚約者を。
そして……婚約者の愛情を。
一方スコットは、義妹の濁水のような本音など微塵も知らずに、ただひらすら胸がもやもやと疼いていた。
彼の気持ちが、確実にクロエからコートニーに傾いた瞬間だった。