ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
(やっぱり……噂通りに夜遊びを……!)
スコットは知りたくなかった残酷な事実を突き付けられて、頭がぐらりと揺れた。婚約者の、真っ白いマーガレットの花のような清廉潔白なイメージにぴしりとひびが入って、ぼろぼろと崩れていく。
クロエは、清楚で純粋な姿に擬態して、本当のところはとんでもない悪女だったのだろうか。
これまでは上手く隠していたが、母親の死でたがが外れた? どちらが本当の彼女なんだ……?
(……いずれにせよ、僕はずっと騙されていたのか?)
スコットの胸の中に、疑念や不信感がゆっくりと染み込んでいく。擦り切れた心が傷んだ。傷口に大量に軟膏を塗って、全てに蓋をしたかった。
だが、目の前の無慈悲な現実から顔を背けるなんて、ジェンナー家の嫡男として許されない。貴族とは責任を負うものなのだから。時には、冷酷な決断を下さないといけないのだ。