ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
ふと、スコットの視線がコートニーに向けられた。彼女が見つめ返すと、彼の瞳は陽炎のように揺らいでいた。
二人の間に沈黙が落ちる。
「君は……」ややあってスコットがぽつりと声を出す。「クロエとは仲良くやっているのか? 家での彼女の様子はどう? 彼女は……噂通りの令嬢なのか…………?」
その掠れた弱々しい声には、懇願に近いものが帯びていた。
婚約者として、長く付き合ってきたクロエ。
彼の瞳に映った彼女は、優しくて、陽だまりみたいな笑顔を向けてくれて、貴族令嬢としていつも頑張っていて。決して悪女と称されるような行為はしないはずだ。
だから、嘘だと言って欲しかった。
クロエは、これまでと同じ無垢な彼女であって欲しい。
だが、隣に座っている未来の義妹は、彼の求める答えを与えてはくれなかった。