ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜

「あのね、このドレスはね、お異母姉様が捨ててたのをあたしがこっそり回収して、メイドにお願いして仕立て直してもらったの。前のデザインだと、あたしには大人っぽ過ぎるから……」

「すてっ――」

 スコット絶句して、時間が止まったように固まった。
 指先からぴりぴりと痺れが伝わって、全身に鈍い痛みが走った。

(クロエが……捨てた? 僕のプレゼントを? ネックレスだけじゃなく、ドレスも…………?)

 たしかに、目の前の義妹が着ているドレスは、クロエが15歳のときにスコットがプレゼントをしたものだった。彼女が初めて王宮の夜会へ行く日――15になった貴族が国王陛下に挨拶へ伺う日に、ジェンナー公爵家から贈ったのだ。

 婚約者の瞳の色のドレスは、特別な意味を持つ。それをクロエも知っているはずなのに、捨てた。
 譲るのではなく、捨てた……?
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