ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜


 父の母に対する所業は許されることではない。
 そのことに彼女は今でも怒りを覚えていた。

 しかし、同じ父の「被害者」と言っても過言ではない二人のことを憎むのは、お門違いなのかもしれない。貴族に求められて平民は拒否することが出来ないのだから。

(それにお母様も人を憎んではいけない、って言っていたわ)

 二人とも初めての貴族の生活で、今の自分と同じくらいの不安を抱えているのかもしれない。父親のこれまでの裏切りを水に流すのは難しいけど、これからは家族になるのだから少しでも歩み寄らなくては……。


 しかし、そんな甘い考えは無意味だったと、彼女はすぐに悟った。

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