ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
コートニーはうるうると瞳を濡らせながら、おずおずと口を開く。
「この前ね、お異母姉とあたしのお部屋を交換することになったの。そのときに、お異母姉様はいい機会だからって不要なものをどんどん捨ててて。その中に、これもあったの……」
「そう、だったの、か……」と、スコットは上ずった声で答える。喉がひりついて、まともに返答できなかった。
不要。捨てる。
これらの言葉が、彼の純真な心に、ずしりとのしかかって行く。
そのままソファーから床に流れ落ちそうなのを、公爵令息という立場が辛うじて堰き止めていた。
そんな心をつゆ知らずか、コートニーは幼子のように無邪気に言う。
「そうなの。それでね、このままじゃ綺麗なドレスさんが可哀想だから、お異母姉から焼却炉で焼かれる前に、あたしが回収したのよ。だって、こんなに素敵なドレスなのに、捨てるなんて勿体ないでしょう? きっと……贈った方や作った方の、温かい想いが込められてると思うから……」
「コートニー嬢……」
スコットはまたもや押し黙る。今度は驚愕や衝撃ではなく、純粋に感銘を受けたからだ。
目の前の少女は、なんて健気で純粋な子なのだろうか。まるで、ただのドレスに命が吹き込まれているかのように、愛して、慈しんで。
こんなに優しい子には、今まで会ったことがない。
彼は、これまではクロエが一番優しい子だと信じ込んでいたが、どうやら長いあいだ騙されていたようだ。
「あの……勝手にリメイクしてごめんなさい! 素敵なドレスだったから、どうしても着てみたかったの」