ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
……そう考えると、クロエは一気に頭に血が上った。
「あなたなのねっ……!」
かっと全身が熱くなって、自然と身体が動いた。
怒りで胸が煮えたぎっている彼女は理性も蒸発してしまったようで、血走った目で異母妹を睨め付けた。
激しい怒りを撒き散らしながら、こつこつと早足で異母妹のもとへ進む。
そして瞬く間に彼女の腕を掴み、自身に強く引っ張ってから、
――パシンッ!!
出し抜けにクロエはコートニーの頬を引っ叩く。息を呑んで目を見張る異母妹と婚約者。同時に姉の瞳からつつと涙が流れる。
「ふざけないでっ……! あなたたち母娘はっ、私からたくさん奪っていって……おまけに婚約者までっ…………!」
「ふざけているのは君だろうっ!」
「きゃっ」
ドン――と鈍い音がした。
スコットはコートニーを片手で抱き抱え、反対の手でクロエを突き飛ばしたのだ。
彼女は床に倒れ、身体を打ち付けた。