ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
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「ほら、今日の餌よ」
やっと継母の部屋の掃除が終わったと思ったら、今度は異母妹だ。
一通りの仕事が終わって、クロエが一息ついているところにコートニーはメイドたちを引き連れて、ノックもなしに異母姉の部屋に突撃し、例の如く無造作に残飯の入った木製の器を床に置いた。
今ではクロエの食事は夜に出されるそれだけだった。
コートニーは飽きもせずに、毎晩異母姉のもとへ行き「餌」を置いて行くのだ。
「ありがたく思いなさい? このあたしが直々に恵んであげてるんだから。あんたなんか、本当はすぐにでも屋敷から放り出されても仕方のない立場なのよ?」
「……ありがとうございます」
異母妹とのお決まりのやり取り。彼女が満足する答えを言わないと、継母と同様に身体を打たれる。
それに、彼女の機嫌を損ねると食べ物が貰えない。
だからクロエには、選択の余地なんてなかった。