ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
コートニーは上機嫌に口角を上げて、
「どうぞ、召し上がれ?」
まるで異母姉を犬のごとく指を鳴らして合図をする。
するとクロエはおもむろに床に跪いて、腕に口を付けた。
無言で、食べる。食べる。一心不乱に口の中に注ぐ。
理不尽で過酷な労働と魔法の修行で彼女は疲弊して、激しい空腹状態だった。だから、むせ返るような腐敗した匂いなんて……もう感じない。
「あっはっ! 見てよ、これ! 乞食? いえ、獣みたぁ~い! お異母姉様ったらみすぼらし過ぎ~」
ゲラゲラとコートニーの下品な笑い声が部屋中に響いた。手を叩いて喜んでいる。それにメイドたちの嘲笑も重なって、さざなみのように悪意が広がった。
クロエの感覚はもう麻痺していた。
どんなに彼女たちから蔑まれても、生きるためには仕方がない。
生きて、魔法を使えるようになるためには。そして……母親の名誉を回復させるためには。