ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「ちょっと、残っているわよ! 最後まで綺麗に食べなさいよ」
もうすぐ終了の合図だ。最後まで綺麗に……こう言われると、クロエは舌を出して食器を舐める。残った水滴や滓まで全てを舐め尽くすのだ。
「よしよし。今日も綺麗に食べ尽くしたわね。――で、お礼は?」
「毎晩美味しいご馳走をありがとうございます……」
コートニーたちはどっと吹き出す。
「あんな残飯がご馳走だってぇ~」
「見た? あの豚みたいな食べ姿。人としての誇りなんてないのかしら?」
「こんな下等な生き物に慈悲を与えるなんて、コートニー様ったらお優しいわ~」
異口同音に、クロエの悪口。いつものことだ。
ここでコートニーの機嫌を損ねて餓死するよりかはましだと、クロエはひたすら耐えた。少しの時間だけプライドなんてかなぐり捨てて、ただ我慢をすれば良いだけなのだから……。
しかし、クロエが我慢をすればするほど、継母と異母妹からの攻撃は、激しくなる一方だった。