ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
◆◆◆
「不味いわ。もう一度」
「はい……」
「ちゃんと自分で飲んで、どこが悪かったか味を確認しなさいって言っているでしょう? さぁ、全て飲み干しなさい」
「分かりました……」
クロエは、上手に淹れるのを失敗した渋いお茶を、ぐいと呷った。
熱湯が舌に絡んで吐き出しそうになるが、ぐっと堪える。口内がひりひりして、剥けた皮が痛くて、味なんてもう分からなかった。
今日はコートニー主催のお茶会だった。
彼女が特に仲の良い、数人の令嬢だけを招待した、小さな身内の会である。
お茶会では、コートニーがクロエのことをメイドのように扱って、給仕をやらせていた。
しかし、召使いとしての仕事を始めてまだ日の浅い彼女は段取りが悪く、更には高位貴族令嬢に出すには未熟で不味すぎるお茶を出してしまった。
そのことに激怒したコートニーとクリスが「再教育」と称して、夕方からずっと美味しいお茶を淹れさせる訓練をさせていたのだった。