小児科医は癒やしの司書に愛を囁く

「……いや。治してやれなくて。辛い治療にも耐えているのに。隆君には力不足で申し訳ないと思っている」

「弘樹先生……先生は隆君のためにできることをやっているんだからそんな顔しないで」

「美鈴……」

「でも治るといいですね。ふたりの頑張りが報われて欲しいです……」

 私はひー君を思い出して辛かった。

「先生お食事は?」

「ああ、少しもらおうかな。また、おにぎりだけ食べたんだ」

 先生はあっという間に食事をしてお風呂へ行った。私はやはり疲れていたんだろう、先に入ったベッドでいつの間にか寝てしまった。

 翌日。目が覚めたら先生はもういなかった。メモが置いてあった。

『カンファレンスがあるので早めに出ます。本、隆君が転院になるようなら渡しておく』

 先生が気を利かせて持って行ってくれたようだった。
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