小児科医は癒やしの司書に愛を囁く

 結局、隆君は移植が出来る病院に転院が決まったそうだ。

 先生が転院前に私のプレゼントを彼に渡してくれたようだ。柊さんは転院前お礼の挨拶に来た際、実は元の奥様とやり直そうとしていると話していたらしい。

 私に隆君がプレゼントをすごく喜んでいたこと、色々悪かったと伝えてくれと言われたそうだ。良かった……安心した。隆君の病気が治ることを祈るばかりだ。

 でもその後。

 弘樹先生は、ご実家のはなしが出たあの日から、私がそのことを聞こうとすると話をそらすようになった。聞かれたくないんだなと思った。

 季節の変わり目で小さい子は風邪を引きやすく、檜山先生も寝込んでいて急に先生は忙しくなった。夜勤も増えた。日勤の私とすれ違いの日々だった。

 ただ、夜は彼のベッドで一緒に寝てはいるが、後から入ってきた彼が倒れるようにして寝ているのに気づいていた。疲れているのだろう。いわゆる男女のそういうようなことは一切ない毎日になった。

 家でも時間がすれ違いほとんど話さない。夕飯も食べてきてしまう。
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