小児科医は癒やしの司書に愛を囁く
しかも私が読み聞かせに行っていないので、仕事中の彼と会うことはもちろん、話すこともなくなった。
キスも……あれから一度もなかった。
一週間位経ったころだったと思う。昼休み私宛に外線で電話がかかってきた。知らない人で住田さんという年配の男性からだという。
「突然のお電話ですみません。原田弘樹の父親です。弘樹と同棲されている平田さんはあなたでよろしかったですか?」
正直、唐突で驚いた。
「……あの。確かにそうですけれど、先生からお聞きになられたのでしょうか?」
だって先生だったらこんなふうに私を紹介しないだろう。嫌な予感がした。
「先週、宝田病院のお嬢さんである佳奈美さんから連絡をもらいました。お会いになったそうですね。話は聞きました」
やっぱり、嫌な予感は当たった。縁談を勧めていたのはお父様だと佳奈美さんが確か言っていた。
「……あのどういうことでしょう。息子さんの弘樹さんにご連絡されていないんですか?」
「まあ、私が連絡しても電話を切られてしまうのでね。失礼かと思いましたが、こちらに連絡させて頂いた方が早いかと思いました」