小児科医は癒やしの司書に愛を囁く

「今日のこと、できれば弘樹には話さないで欲しいんだ」

「わかりました」

「ありがとう」

 私は気になることがひとつだけあった。弘樹先生は小児科医。住田先生の病院って、まさか……。

「でも、ひとつだけ伺ってもいいですか?」

「はいどうぞ」

「佳奈美さんが確か言っていたと思うのですが、弘樹先生のご実家は病院を経営されているんですか?病院の名前は……住田小児医院ですか?場所はもしかして……」

「ああ。いや、今はここから少し離れているが三丁目にある住田病院という総合病院だ。離婚する前は隣の区で住田小児医院という名前で小児科専門病院を開いていた」

 嘘でしょ……。
 ということは、この先生がひー君の主治医だった住田先生なの?私は住田先生が廊下を通る度、椅子に座って絵本を読んでいる私を見ると『いい子で待っていて偉いね』と言って頭を撫でてくれたのを思い出した。
 
 あのときの優しい微笑み。声も忘れていないつもりだったけど……気づかなかった。

「……」

「平田さん?」
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