小児科医は癒やしの司書に愛を囁く

「別々に寝るのはダメだ。だって、やっと君が僕のベッドへ来たんだ。忙しいのが終われば僕は……」

 彼女は黙って見ている。

「偽の恋人同士。最初はそのフリをうまくするため一緒に寝ていたんですよ。それももう必要ない。先生の本音が見えてきたの。私も限界だった」

 俺は驚いた。限界ってどういう意味だ?

「美鈴。限界ってどういう意味だ?」

「そのままの意味です。先生と一緒にいるのがつらいの」

「俺のことが……最初から偽の恋人だったからベッドを共にするのは本当はいやだったということか」

「そうじゃない。先生にそんな顔させたくない。本当に好きな人と恋人になって。そうしたら、こんなふうにお互いを気にしながら話すこともない。本能のままに生活出来る」

「本能のままね……そうだ。その通り。もう恋人のフリをする必要はない!」

 美鈴を抱き寄せると噛みつくようにキスをした。
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