小児科医は癒やしの司書に愛を囁く

「美鈴、開けて」

 キスをいったん放して口元で呟いた。すると、彼女は俺を見上げて息を吐いた。その瞬間に深いキスをした。

「ん、んう……ん……あ……」

 涙目になった美鈴を見ながらハッキリと言った。

「美鈴。もう君のいうとおり本能のままに行かせてもらう。僕は君が好きだ。それは君を助ける前からだ。最初に言っただろ?気に入らない女性と同棲などしない」

「じゃあどうして、手を出さないでいたの?文恵さんにも聞かれたわ」

「馬鹿だな美鈴。君の気持ちもハッキリしないうちから手を出したら問題だろ?ふたりの問題がクリアになった頃、確認するつもりだった。でも急に忙しくなってそれもできなかった。だが、それもいいわけだな……いつか君がこの関係を解消しようといいだすんじゃないかと面と向かって話すのが怖くなった」

「私は、先生が言い出しにくそうにしているから、出て行ってあげた方がいいと思ったの。あれから全然キスもしてくれないし……」

 俺は最後のひと言に驚いた。
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