小児科医は癒やしの司書に愛を囁く
「おかえりなさい」
「ただいま、美鈴」
「弘樹さん、お父様はどうでした?」
「あ、うん。とりあえず大丈夫そうだ。義理の弟が念のため心配して連絡をくれたようだ」
「そうですか。それなら良かった。夕飯は?」
「ああ、あちらで頂いたよ。久しぶりに弟と話しながら食事をしてきた」
「そうですか。それは良かったですね」
そのまま先生はお風呂へ行き、出てくると絵本を見つけて声を上げた。
「……この絵本!美鈴の?」
「はい、そうです。この間同じ本を隆君にもあげたんですよ」
先生は絵本を持ち上げて固まっている。
「……これ。いつから持ってるの?」
「この本自体は最初に読んだのは三歳くらいです。それで母に買ってもらってそれから小学校一年生くらいまではそれを読んでいたんですけど、なくしてしまって、買い直したんです。それがこれです。だからボロボロでしょ。でも私のバイブルだから捨てられないんです」