小児科医は癒やしの司書に愛を囁く

「館長。私そういった病院を増やして訪問をメインにさせてもらおうかと思っているんです」

 私は館長に言った。

「平田さん。トラブルもあったし、もうそういうのは懲りたんじゃないのかい?怖くない?」

「ある意味勉強になりました。色んな親御さんがいるのもわかったし、患者さんや親御さんへの距離の取り方を考えるようになりました。今度こそ、それを生かしていきたいんです。それに病院訪問は非常にやりがいがありますし、待ってくれている子供を思うと増やしたいんです」

 館長は私の話を聞いて、黙った。

「館長。彼女の言ったとおり是非やるべきだと思います。私も子供がいますので、彼女と代わって病院へ通うようになってから非常に重要な仕事だと痛感したんです。できるなら、増やすべきです。この図書館の知名度もぐんと良くなります」

 さすが、文恵さん。説得の仕方が社会的。自分の事ばかり言っている私とは大違い。

「うーん。そうなると、平田さんの代わりを誰か入れないと回らないよ。新人じゃ困るしね」

「今の新人さんが研修開けるまでは新たな訪問はしないようにして、それ以降お考え頂けませんか?最初はいくつか募集をしてよく調べてから試しに行ってみます。続けるかは行ってからその病院の状況を見て判断します」
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