小児科医は癒やしの司書に愛を囁く

 つい涙が出た。本音だった。引っ込み思案の私にはあまり友人もいない。

 特に年上の女性は母代わりで出産の経験を聞いたり、これから頼りたいことばかりだった。

 文恵さんの転居は私にとって大打撃なのだ。

「そうか。寂しくなるな。俺の役割も大きくなりそうだ。何でも相談しろ。美鈴は自分で抱えがちだからな。父のことも話してくれなかったが、これからはなんでも話すんだぞ。約束してくれ」

「……はい」

 背中をさすってくれた。私はティッシュで鼻をかんで、息を吸った。

「……美鈴また深呼吸?今度は何だ?」

 今度こそ、深呼吸が必要だわ。

「実は住田病院に明日お試しの病院訪問に行きます」

「……は?」

「いくつかの病院から宝田小児医療病院にうちが行っていると言う話を聞いたそうで、来てもらえないかという依頼が来ているんです。その中の最初がお父様の病院でした」
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