小児科医は癒やしの司書に愛を囁く

「……弘樹さん」

「久しぶりに聞いた、その呼び方。可愛い、美鈴」

 そう言うと、キスをしてその場に倒された。服を脱がしながらあちこちにキスされて止まらなくなり、ベッドへ移動した。

「ああ、弘樹さん……好き」

 彼にしがみついてしまった。離れたくない。別れたくない。様子が変だと思ったのか彼が私をじっと見た。

「美鈴。大丈夫だ、ずっと美鈴の側にいる……なにも心配するな」

 夜半まで愛されて、気づいたら朝だった。

 翌日。午後から予定通り絵本を持って住田病院へ行った。

 内装は新しく、宝田小児医療病院より広い。プレイルームもあり、そこにも絵本がいくつかあった。

 そして、どこか既視感がある。昔通っていた住田小児病院に似ているのだ。おそらく、先生がそうされたのかもしれない。

 あの病院は過ごしやすかった。家族が待つ場所をたくさん作ってあったのだ。

 私はその広いプレイルームにカートを使って段ボール三箱分の絵本を運び入れようとしたら、白衣姿の若い男の先生が近づいて来た。
< 166 / 226 >

この作品をシェア

pagetop