小児科医は癒やしの司書に愛を囁く

 三日後、また住田病院へ行った。今度は診察のためではない。午後時間を取って、父に会うため行った。

 事前に連絡をいれてあったので、自宅のほうへ案内された。久しぶりに父の後妻に会った。弟とよく似ている。

 母は外科医だったので、女性にしては肝が据わっていて可愛げにかけるところがあったが、この人は穏やかだ。実は両親と大学の同窓だったが国家試験に合格できず、お嬢様育ちだったのもあり、そのまま実家で手伝いをしていたそうだ。

「弘樹さん、お久しぶりです。あの、お母様はお元気ですか?」

 こういうところがなんというか、優しいというか天然というか……。

「ええ。元気に大学病院でバリバリやっているようです。お父さん、入院の話をしたら心配していましたよ。でも奥様がきっとみてくださるから大丈夫だろうとも言っていました」

「そうですか。一度お会いしたいとずっと思っていたんです。学生時代からの知り合いですし、運命のいたずらでこんなことになりましたが、どうぞよろしくお伝え下さい。いつでもおいで下さいとお待ちしていますとお伝え下さいますか?」

「はい。伝えます」

 後妻は出て行った。
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