小児科医は癒やしの司書に愛を囁く
写真の中の二人は笑っている。きっと喜んでくれるよね。
私は平田美鈴。地域の図書館で司書をしている。
今日から隣の大きな病院の小児科へ訪問して、移動図書館をはじめることになっている。
昔、弟が生きていたころ、私は小児科のプレイルームで絵本を読んでいつも母を待っていた。
その経験が今の仕事に就かせて、小児科への移動図書館はその夢のひとつだった。
二ヶ月前から数回にわたり、小児科へボランティアで読み聞かせに出かけた。
身体の悪い子供達や外出できないお母さん達のためにとてもいいと思ったので、館長と地域の庁舎に働きかけて実現したのだ。
その時、相談に乗ってくれたのが小児科医の弘樹先生。話しやすかったので、子供達が貸し出しを希望するなら働きかけたいと言ってみた。すると、優しい笑顔で答えてくれた。
「それはとてもいいと思う。僕の方で院長に掛け合ってみるから、君も館長に聞いてみて?」
お互いで上司を説得、会議の場を作り、実現の運びとなった。子供達は大喜びだ。
「美鈴お姉さん。今日はこの本読んで」
「いいわよ」