小児科医は癒やしの司書に愛を囁く

 「わかりました。ちょっと待って下さい」

 そう言って部屋へ入ると、冷蔵庫からペットボトルのお茶を出して先生に渡した。

 「お、気が利くな」

 「お茶しかなくてごめんなさい。車で飲んでもいいかと思って……」

 「ああ、ありがとう。じゃ、できれば一週間分ぐらい持ってきて。冷蔵庫の中も見ろよ」

 「はい」

 「じゃ、電話して」

 そう言うと先生は二階の通路から外をじっと見ている。
 私は急いで部屋へ戻るとスーツケースを出してきて、片っ端からとりあえず必要な物を入れていった。

 市販品で買える物はいいとして、自分の物じゃないと困る物と、母の形見や貴重品、洋服、下着、読みかけの本、ノートパソコンと充電器、冷蔵庫の中も確認して保冷袋に入れていく。
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