小児科医は癒やしの司書に愛を囁く

 「僕の悩みはね、父経由で院長から縁談を持ちかけられていることなんだ。院長は実家の父の古い知り合いでね」

 聞いたことがあった。多分お相手は院長の娘さん。医療事務をされている。噂になっていた。彼女は先生が大好きらしい。

 「……お相手は受付で事務されているお嬢さんですか?確か絵美先生の妹さんですよね?噂は聞いていました」

 「そうか。彼女が余計なことを言いふらしていて、僕は本当に参っているんだ。彼女はお嬢様だからかあけすけでまあ、僕としては全くそういう相手として考えられないタイプなんだ」

 「……」

 それもなんとなくわかってた。他の人から言われて困った顔してたのも見たことあるし。

 「お断りしたんですか?」

 「もちろん。冷たくするのも院長の手前困るから妹みたいなものだと伝えたんだが、恋愛はそうやって始まるとか言い出してね。院長も彼女を静観していてそれも一番問題なんだよ」

 「……それは大変ですね。病院を変わるとか出来れば違うでしょうけど」

 「まあ、無理だな。患者を大勢抱えているし、子供だから、大人の事情で他の人が主治医になるよとか言っても懐かないと治療が難しくなったりする。重い病気の子供もいる。子供と親の性格や家の状況も把握が必要でね」
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