小児科医は癒やしの司書に愛を囁く

 それはそうだろうなとなんとなくわかる。読み聞かせで通うようになり、親を含めた病院との微妙な関係もわかるようになってきた。

 小児科医は本当に大変だ。大人相手ではないし、子供のメンタルだけでなく、患者の家族のメンタルもみている先生がほとんどだ。

 読み聞かせで親の愚痴をよく聞く。それも仕事だと最近よくわかってきた。

 「それはわかります。私も最近ご家族の事情を聞かされて話を聞いてあげるだけでも違うんだなとわかってきました」

 「そうだろ?僕はこの病院を離れられない。そうなったら諦めてもらうために恋人を作るしかない。それが君だよ」

 「先生。ちょっと落ち着いて下さい」

 「僕は至って落ち着いている。大体、君のことはずっと前から気になっていた。君は僕のこと嫌い?」

 わかっていて聞いてるな?いたずらっぽい目がこちらを見てる。

 「……先生が嫌いなわけないでしょ。それなら病院へ行ってないし、今日だってついてきてないですよ」

 嬉しそうに満面の笑みで私を見た。まずい、言い過ぎた。
< 36 / 226 >

この作品をシェア

pagetop