小児科医は癒やしの司書に愛を囁く

 「女の先生?」

 「……それが、男の先生。独身です」

 「何それ?大丈夫なの?違う狼の巣に落ちたとかじゃないよね?」

 す、すごい例えだな。でも、その意見もわかる。私、逃げることしか考えられなくて、先生に甘えてしまったけど、ダメだよね。

 「そうですよね。あ、でもその先生はいい人です。で、実は。誰にも言わないで下さいね。文恵さんを信じて話します」

 そう言って、昨日先生と話したことをかいつまんで話した。とりあえず、偽装だと言っておく。
 
 あははと文恵さんが笑い出した。

 「そんな顔しないでいいよ。美鈴ちゃんがそこに住むことを了承したということは、つまり、先生が前から好きだったんでしょ?あなたは偽装で自分の危機を乗り切るためとはいえ、気のない独身男性の家に転がり込むなんて出来ない性格だってわかってるもの」

 文恵さん。これだから敵わないんだよな。

 「……私には高嶺の花で、片想いしているだけで幸せだったんです」
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