小児科医は癒やしの司書に愛を囁く

 「はいそうですね」

 時間がないので急いでランチを食べて、図書館に戻った。

 帰りに館長へ話すと、とても怒られた。

 「平田さん。そういうことはもっと早く言わないとダメだよ。以前、この図書館でもそういうことがあってね。大変だったんだ」

 「すみません。昼間片桐さんに相談して、お聞きしました」

 「そうだよ。その人もね、平田さんくらいの年齢だった。寂しい男はすぐに癒やし系の女性に落ちて、自分のいいように解釈するんだよ。図書館だと本のことを聞く振りをして話しかけやすいから奥手の男性も距離が縮めやすいんだろう」

 「……そうなんですね」

 「まあ、それは置いておいて、君の場合はちょっと違うけどね。場所が病院で患者の親。寂しい男なのは同じだな。来週から担当を替えよう。いいね」

 「……出来れば来週は片桐さんと一緒に行かせて下さい。本当は代わりたくないんです。子供達も懐いているし、他の保護者の方ともやりとりがあって。私にとってとても大切な時間なんです。事態が落ち着いたら戻させて下さい」
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