小児科医は癒やしの司書に愛を囁く

 「気持ちはわかるよ。だけど、緊急事態だ。周りも巻き込んでる。まあ、最初は別な人が一人で行くのは子供相手だし無理はあるな。わかった、来週だけ片桐さんと行ってもらって、翌週から片桐さんとしばらく交代だ。今後の推移を見てその後のことは考えよう」

 「……わかりました」

 「とにかく、自分のことを大切にして。僕も君の管理者であるから、何かあってからでは遅いんだ」

 「わかりました。問題が解決したらまた行かせて下さい。お願いです」

 「……状況をよく見て、問題なければいいよ。それと、図書館の外に出るときは声をかけて。周りには私の方から話しておく。アパートは特定されているんだろ?出た方がいいんじゃないのかい?」

 「はい、実は……」

 その後、一応恋人のところに同居する予定だと話したら驚かれた。それはそうだろう。恋人がいるなんて素振り見せたことも言ったこともなかった。でもしょうがない。館長に言った段階で覚悟が出来た。とうとう、嘘だけど言っちゃった。やるしかない。

 大事になってしまった。柊さんはきちんと断ったのになんでしつこくするのだろうか。確かに、私が毎週行くのも悪いのかもしれない。失恋しても会うと忘れられない。距離をおくしかないのかもしれないと思い至った。
< 49 / 226 >

この作品をシェア

pagetop