小児科医は癒やしの司書に愛を囁く

 「は、初めてなんです……」

 「……え?」

 「……キスしたの。わ、わたし、男性とお付き合いしたことはあっても、キスするの逃げて、フラれてしまって……」

 先生は私を見て嬉しそうに笑った。

 「嬉しいよ。もらったからには僕は君を大切にする。悪いがもうキスは返せないぞ。どうだった?ファーストキス」

 「もう、先生の馬鹿!」

 先生はそっと私を抱き寄せると、身体を硬くした私を上から覗いて言った。

 「美鈴。僕らは恋人としてある程度のスキンシップは必要だ。そうじゃないと君の場合、緊張しているから距離がありすぎる。わかる人にはすぐに偽装だとばれてしまう。それに、僕は君のこと……とても気に入ってる」

 「……とても?」

 「当たり前だろ。気に入らない女と同棲なんてしないよ。君だからこんな話してるんだ。君は違ったの?俺以外でも一緒に暮らした?」

 「……私、私は……」

 「何?」

 「……先生は高嶺の花です」

 先生は笑い出した。
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