小児科医は癒やしの司書に愛を囁く

 入り次第頭を下げる。予定より一時間近く遅れてしまった。

 「いや、今日は金曜だったから、こうなるのは予測済みだよ」

 そう言うと、テーブルの上に用意してある重箱が目に入った。

 「お茶を頼むよ」

 電話で連絡した院長は席に座るよう促した。ソファに向かい合わせで座った。すると、秘書がお茶を入れてきて、重箱と箸を目の前に置いた。

 「とりあえず、暖かいうちに食べようじゃないか」

 箱を開けて驚いた。ウナギだ。

 「すごいですね。こんな立派なうな重ここ最近食べたことはなかったです。いいんですか?」

 「ああ。君には普段からよくやってもらっている。お礼にしては足りないくらいだ。これからのことを考えるともっとだな」

 「院長。そのことですが……」

 院長が手を上げて制した。
< 65 / 226 >

この作品をシェア

pagetop