小児科医は癒やしの司書に愛を囁く

 「あ、そうでした……」

 困ったやつだな、もう。それに引越なんてさせるわけがないだろ。

 「美鈴」

 「はい」

 「……どこにも行かせない」

 「え?」

 「図書館には戻らなくていいのか?」

 「先生ったら、今何時か知ってます?」

 時計を見るとすでに十九時だった。隆君の急変からバタバタしていたせいで、時間が経ったようだ。
 そうだ、隆君を見てこないと……。

 「美鈴。先に帰っていろ」

 「はい」

 にこにこ目の前で笑っているのを見たらこらえられなくなった。立ち上がって抱き寄せた。
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