小児科医は癒やしの司書に愛を囁く
弟の病気は長引いて、私の本は絵本から児童書へ変わっていった。本は私の友達だった。外にも遊びに行けず、寂しかった。だが、良くならない弟の看病で母はとても疲れていた。父は仕事にばかり……その頃は家の雰囲気も暗かった。
もの思いにぼおっとしてしまい、ふっと我に返る。急いで本を並べて戻ろうと立ち上がった。
ん?見たことのある後ろ姿。絵本コーナーにたたずむ背の高い男の人。
そうっと回って見に行くと……やっぱり、彼だった。
夢中になって本を見ている。
「……先生」
はっと顔を上げて私を見る。恥ずかしそうにしている。
「み、美鈴。見つかったか……隠れているつもりだったんだけど。仕事の邪魔したくなかったし」
小さい声で話す。
「私も夢中になって仕事していたので気付かなかったんですよ。背の高い人がいるなあと思ってたら先生だったの。何の絵本みているんですか?」
見ると私の大好きな七転び八起きの動物絵本。