小児科医は癒やしの司書に愛を囁く
入りきらなかった絵本をカートに乗せて、地下に運んで書架へしまいに行く。戻ってくるとだいぶ館内の人が減っていた。もう十八時だ。貸し出しデスクへ戻ると、高村先輩がパソコンでチェックをしている。
頭を上げて私を見た。
「あそこにいる背の高い男の人、初めて見たな」
え?弘樹先生だ。医療関係の本のところにいる。時間も時間でいる人が少ないから余計目立つ。
「……」
どうしよう。黙っていたら、無視されたと思ったのか、高村先輩はまたパソコンに向かいだした。
閉館十五分前のアナウンスを入れる。貸し出しの機械の前に人が並び始めた。デスクのほうへ来る人もいる。
弘樹先生は相変わらず書架の前で陣取って本を読んでいる。おそらく私を待っているから動く気がないのかな?
五分前の放送と音楽を流し始めて、私は館内に本が落ちていないか、落とし物がないかなど確認のため歩き出した。
先生の側に行き、声をかけた。
「……先生、借りてきて下さい。終わっちゃいます」
「……ん?あ、そうか、そうだな」